特定非営利活動法人

仙台敬老奉仕会


第23回研修会

平成24年3月30日 於仙台福祉プラザ

テーマ 米国に学ぶ介護制度、介護ボラ制度、シンポジウム形式

シンポジスト

  • 岡本仁子 特養ボランティア 東海理事
  • 田中信弥 特養 萩の風 施設長
  • 金森従雄 社会福祉法人 幸生 理事長

司会:吉永 馨(当会解放)

発言要旨

第1席 岡本仁子

2月13日、ナーシングホームVilla Health Care Center
2月14日、ナーシングホームPalm Terrace Care Center
2月15日、ナーシングホームKeiro Nursing Home
の3施設を訪問しました。

前2者はリバーサイドにあり、共にリハビリを中心とした施設で、滞在期間も短く、日本の特養とはだいぶ事情が違いました。然し毎日いくつかのグループ活動(アクティビティ)があり、ボランティアが活動していました。
ボランティアの人数は、学校が休みとなる時期に学生が多く参加しますので、時期によって異なるようでした。
すべての施設にアクティビティ ディレクター(ボランティアコージネーターのような役割)がいて、ボランティアと入所者の希望を調整していました。
このようなアクティビティの実施は州政府からの要望であると聞きました。

3番目のKeiroはロサンゼルスにあり、長期滞在型の施設で日本の特養に似ていました。
ここにも上記のグループ活動が盛んで、私たちも現場を参観しました。そのほか、買い物に行く時に一緒に行くボランティアや、1:1で寄り添う形のボランティアや、資格を持ったボランティアがリードする活動もあります。
散髪などをするボランティア活動も見学しました。ボランティアは総数600人におよび、各人は週1回から~2度奉仕しますが、毎日奉仕する人もいました。
また、市民からの寄付も多く、施設の建設も寄付に寄るとのことでした。市民が人的、資金的に施設を支援し、これを行政が支えるという形態が確立しているようでした。

いずれの施設も明るく、開放的で、職員もボランティアも活気があり、入所者と親しげでした。
居室も開放的で、誰でも中を覗けます。ボランティアの出入りも自由の様でした。居室の壁に絵や写真を貼り、家庭的雰囲気を維持していました。
家族の出入りも多く、3ドル50セントの低額で昼食を注文し、入所者と一緒に食事をすることもできるそうです。

行政側もボランティアを支え、交通費その他を支出していました。
寄付する人には税制面の優遇措置があります。総じて、世を上げボランティアを行い、またはこれを支え、市民が支え合い助け合って老人を大事にしている様子がうかがえました。

シニアボランティアセンターの文書に、ボランティアは他人を助けるだけでなく、自分が学ぶ機会であり、友達が増え、知識を得、元気と活力を得ると書いてありましたが、私自身も病院や介護施設でのボランティアを通して、全く同じ思いをしています。
皆様にもぜひ、私たちと共にボランティアを始めて頂きたいと思います。施設側も、ボランティアが楽しく奉仕できるよう、受け入れ態勢を整えて下さるよう、お願いいたします。

第2席 田中信弥

日本の特養のボランティアは、コーラスグループが慰問に来たり、町内の人達が施設の行事、例えば節句、七夕、祭り、クリスマスなどに参加し、手伝う形が多いです。
これを慰問型ボランティアと呼べば、施設内で奉仕する見守り・寄り添い型ボランティアは少ないのが現状です。
最近は見守り・寄り添う型が増えつつありますが、アメリカに比べると遥かに少ないです。

今後は、団塊の世帯の高齢化もあり、75歳以上の人口が急増します。要介護者の増加は避けられません。
その増加に対応するために必要とする看護師や介護士も多数に及びますが、これを将来にわたって確保する見込みが立っていません。
ボランティアなど、地域の社会的資源を活用しなければこれを乗り切ることはできません。
アメリカ型のボランティア制度を取り入れる必要があります。

ロサンゼルスのKeiroは長期療養者を預かり、日本の特養に似ていますが、そこに契約しているボランティアが600人いて、毎週1ないし2回奉仕していました。
アクティビティなど、ボランティアが自ら計画し、必要な機材も自分たちで調達しています。
毎日20~30人のボランティアが来て奉仕し、年中無休です。また、市民からの寄付も多く、施設を維持する力になっています。

日本はどうすればいいでしょうか。アメリカで行われ、日本でも一部行われている学生の単位制を強化する。
つまり、学生がボランティアをした場合、これを学科の単位にすると言うことです。
学生のみならず、元気な高齢者もボランティア活動に参加します。社会は、寄付をして施設を支えることも必要です。

それが実現するため、施設側は受け入れ態勢を確立し、標準化します。
標準化とは、施設間の格差をなくすため、一定の基準を設け、みんながそれを学んで歩調を揃えることです。
ボラを受け入れる窓口を明確にすべきでしょう。ボランティア側は法令の順守や守秘義務などを身につける必要があります。
ボランティア側と施設側が良好な関係を維持し、達成感を共有することが必要です。

以上のようなことを学ぶ場として、現在の敬老奉仕会は有効ですが、さらに、地域包括支援センターの利用も考慮すべきでしょう。

施設は体制の整備としてコージネーターの配置が必要です。
コージネーターが新しいボランティアとよく話し合い、いわゆるマッチングを行うことも重要です。
施設、入所者、その家族、ボランティア、さらにその外の一般社会まで含めて繋がり合い、支え合いができる社会を作っていきたいものです。

第3席 金森従雄

特養などの老人福祉施設は多くの困難に直面しています。

①物の面では土地、建物、備品、消耗品などなど、
②人の面ではマンパワー、労力などなど
③金、資金のやりくり、給与の準備などなど
④システム、業務、手順、内容などなど

一部に特養不要論さえあります。特養を排して在宅介護に切り替えよとの意見です。
これらの困難をどうして乗り越えて行くか。アメリカの状況を考慮に入れつつ考えてみました。

現状のまま安易に過ごすことはかなわないのではないか。現状を打破するにはどういう方策があるか。

① 高機能高付加価値型、例えば有料老人ホームへ転換を図るか?
② 市民協働型に転換を図るか?米国では市民のボランティアが沢山いて施設運営の力になっている。また、善意の寄付も多額に及び、重要な財源をなしている。

市民協働型施設運営に向かうことが考えられます。特にボランティアに絞って考えますと、

① プロモーター(専属の担当者)を置く、ボラ受け入れの手順を明確化する、担当者に権限を付与する。などが必要になります。ボランティアとの協力体制の維持、定期的な研修や訓練が不可欠となります。
② ボランティア委員会の設置
③ ボランティアへモチベーションを与える事(ポイント制、表彰、利益供与)などを考慮すべきでしょう。

最後の個人的な感想を申し上げますと、「ボランティアは触媒のような存在」と考えます。化学反応が触媒によって迅速に進行するように、ボランティアの存在によって施設全体がスムースに運営されることが期待されます。

高橋 治(仙台老人福祉施設協議会会長)のコメント

老施協としてもボランティア強化の必要を認識し、敬老奉仕会とも協力し、ボランティア制度の学習、その受け入れの準備等を進めて行きたい。


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