特定非営利活動法人

仙台敬老奉仕会


第49回研修会

平成28年7月15日(金)午後3時から
会 場:仙台福祉プラザ 第2研修室

講 演:岡本仁子(当会理事、寄り添いボランティア実践者)
テーマ:いかし、いかされていきる

会場風景

講演要旨

Ⅰ はじめに

 9月にオタワから3人の専門家を招いてカナダの介護事情、ボランティアの事情を学ぶ予定である。その前に、仙台では介護現場でどのようなボランティアを行っているかお伝えしたい。
 私たちのボランティアを傾聴ボランティアと言い、そう思っている人もいるが、これは当っていない。会長が傾聴ボランティアと寄り添いボランティアの違いを説明しているように、私たちは「寄り添い」を中心としている。傾聴のような苦しみの緩和やその解決が目的ではなく、私たちはお年寄りの孤独と見棄てられ感を除くことを目的にしている。
 私は演題を「いかし、いかされていきる」としたが、これは相手の人生を肯定し、自分の人生も肯定し、肯定することによっていき、生かされる。これが私たちのボランティアであると私が思っているからである。
 先日、あるお年寄りの最期に立ち合わせて頂いた。生命の炎を燃やし尽くし、真摯に生きてきた方と最期を共にできた。最後まで「あなたは一人ではない」と関わらせて頂いた。こんな素晴らしいボランティアは他にはない。

Ⅱ 現在に至るまで

 私は東北労災病院でボランティアをしている。或る日OBの方から、名誉院長の吉永先生が老人ホームでのボランティアを捜している。あなたも手伝って欲しいと頼まれた。それに応じて最初に活動したのは平成21年5月26日、特別養護老人ホーム(特養)の「リーフ鶴ヶ谷」だった。たった一人の活動開始であった。初めはお年寄りと一緒に歌ったり、ゲームをしたり、散歩をしたりした。だんだん1対1の関わりが大切なことに加え私たちもそれが楽しいことが解り、心に寄り添う関わり(being)を中心に行うようになり、今日に及んでいる。

Ⅲ 事例から学んだこと

 ①全く言葉が話せない方。傾聴は成り立たない。②単語は口から出るが、文章にならない方。傾聴は難しい。③話はできても会話は難しい方。④話し相手が欲しい方。これらの方たちの具体例を挙げて説明した。これらの事例に共通するものは「生きる希望」であった。私は生きる希望に繋がるお手伝いがしたい。

Ⅳ 施設でボランティアをするということ

 ある時、私が寄り添ったお年寄りが、介護士さんに「ボランティアの人はやってくれるのに、あなたはできないの」と言った。お年寄りは、私たちと介護士さんを比較して評価している。このままでは利用者さんと介護士さんの間に溝を作ってしまう。溝を作ってはならない。介護士さんと利用者さんが仲の良い施設では、私たちも活動し易い。私はユニットリーダーとの話し合いの場を提案し、介護側とボランティア側の意思疎通を図っている。また施設長を囲む会も実施して頂き、施設長の熱い思いを伺い、私たちの帰属意識が高まった。これが吉永会長のいう「ボランティアは準職員」ということだと思う。その意味で、名札に裏面に「認定証」の記載を徹底したい。

Ⅴ これから

 私たちは仙台敬老奉仕会の一員として活動している。個人の思いを優先していけない。ボランティアをしている中で問題が起これば組織が批判される。このことを忘れずに活動したい。
 これから活動に参加したいと思っている人は多いと思う。ボランティアに自信がないので踏み切れない人も多いにちがいない。私も迷いながら活動を続けて来た。顧みると決して難しいことではなかった。利用者さんに「また来てね」と言われた時は嬉しいが、それ以上に活動によって生じる「気付くこと」、「感じること」、「ひらめくこと」が嬉しい。脳が活性化される気がする。ボランティアをすると認知症になりにくいと言うのも頷ける。
 ボランティアをしているうちに気がつけばアクセサリーを着けなくなった。利用者さんに合わせている。飾ることはない、ありのままでいいのだ。時計も外した。時間を気にしないためである。
 私の課題は、①「私でなければ・・・」と言う思いをなくすこと。②見守ることの意義の追求。利用者さんのできることを奪わないこと。「危ないからダメ」と禁止ばかりしては「何もできない人」を造るばかりだと思う。この点は、施設側と話し合っていきたい。
 先日、ボランティアの仲間が亡くなった。最後に会ったとき、彼は「話の腰を折るな」と言った。辛くても物事を直視し、目を逸さず、真意は何かしっかり話しを最後まで聴く。これが彼の遺言。私はこれを守っていく。I am OK, You are OKの関係でこれからも利用者さんと関わっていく。
 今日お話させて頂いたことは明日への出発点。思いを新たにして明日から活動していく。皆様のお支え、ご理解、お励ましに感謝します。


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