特定非営利活動法人

仙台敬老奉仕会


第39回研修会

平成26年11月21日
会場:仙台福祉プラザ
演題:介護に役立つ医学の基礎知識
講師:佐藤牧人教授(東北福祉大学教授、当会副会長)

講演内容(要点のみ、文責吉永)

○ 平均寿命と平均健康寿命(2010年時点で)
男性の平均寿命 79.55歳 健康寿命 70.42歳(その差9.1年)
女性の平均寿命 86.30歳 健康寿命 73.62歳(その差12.68年)
かなり長い間、健康でない時期を経て終末にいたる。

○ 介護が必要となる疾患: 以下の4つが最も多い
①脳卒中 ②認知症 ③高齢による衰弱 ④関節疾患

○ 臓器の予備力は加齢と共に減弱する
心臓、腎臓、肺臓、などすべて。無理は利かない。

○ 視力も加齢により低下する。老眼、白内障、加齢黄班変性などなど、
また暗順応(暗闇に慣れる速度)が遅くなる。夕方、薄暗いとき事故を起こしやすい。

○ 高齢者は脱水(水分不足)を起こしやすい。普段から体液は若者より少ない。
発熱、下痢、嘔吐、熱中症などの際、脱水の危険が高い

○ 骨、関節が弱る。
骨は石灰成分が減り(骨そしょうしょう)、折れ易い。
関節は磨耗し、変形し、痛みを生じ、運動障害の原因となる。

○ 嚥下(食物を飲み込むこと)がうまく行かず、食べたものが気管に入り、
肺炎の原因となる(誤嚥性肺炎)。高齢者はこれを起こしやすい。

○ 尿失禁(尿が漏れること)が起こりやすい。
在宅高齢者の5~15%、施設入所者の30~80%に尿失禁がみられる。

○ 認知障害
加齢により、短期記憶は減弱するが、判断力や問題解決力などは低下しない。
アルツハイマーなど、脳の疾患では認知障害が起こり、病識がないことが多い。

○ 認知症にはアルツハイマー型、脳血管障害(つまり脳卒中)型、レヴィー小体型などがある。
認知症には中核症状と、それに伴う行動・心理症状(BPSD)がある。
中核症状は病気の本質で、記憶障害、判断力低下、言語障害、失行、失認など
BPSDは随伴症状で、不安、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、被害妄想、幻覚・妄想など

○ 認知症の薬物療法
4種の薬剤が市販されている。一時的な改善は期待できるが、長期に良くなることはない。反応は人によって異なる。

○ 介護施設等では感染症対策が重要である。
エンフルエンザ、ノロエウィルス、肺炎、結核、疥癬など
疥癬はヒダニの感染で起こる。ヒダニが皮下に潜り込み、丘疹や水泡を生じ、かゆい。
オイラックス軟膏などの薬剤を塗布して治療する。

○ 看取りの問題
終末期の対応は重要である。一般に人は無用な延命治療を望まない。
現場においては、患者さんの意思が分かればそれを尊重する。
分からなければ家族の意見を尊重し、家族とよく協議して対応する。
昔は延命を絶対視したが、現在はQOL(生命の質)を重視するようになった。
たとえば胃ろうの中止も選択肢の中で考慮される。


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