特定非営利活動法人

仙台敬老奉仕会


第11回研修会

平成22年1月22日 午後5時から 於仙台福祉プラザ

講演1:人の悲しみを感じ、共に居ること 自生苑ボラ 小林テイ子
講演2:施設とボラの協調 当会会長 吉永 馨

講演1 人の悲しみ苦しみを感じ、共に居ること

自生苑でボランティアをしている小林 テイ子と申します。今日この場所に立たせて頂いた事心から感謝申します。

私が所属して活動を行なっている団体は、NPO法人臨床パストラル教育研究センターというところです。全国で研修会、勉強会が開かれて12年位経っています。
心のケアを中心として病んでいる人、家族、悲しんでいる人を大切にしたい、最後まで共に居られる友でありたいと願っています。

今日のテーマを改めて考えますと、大そうなタイトルにしてしまったと多少後悔して居ますが、このタイトルは自然に浮かんだことでした。
自分の中にも悲しみ、苦しみがあると思うのですが、そのことに気付き大切にしていないと、(人の痛みが共感できる)他の方の痛みが理解出来ないものだと、私は体験の中から思っています。

◆ 研修初期の頃の体験(今日私が話そうと思った事を、大まかに6つにまとめてみました)

悲しみや、苦しみを毎日始終感じていたらほとんど病気になってしまいますが、私がボランティアを続けられているのは、研修受講初期の頃お会いした患者さんとの出会いによる体験を通してボランティアの必用性を感じ勉強しなくてはと思ったことでした。

① 訪問初期の頃出会った患者さんから心の奥に抱えている苦しみを告げられた経験、受け入れてもらえた瞬間がありました。(Yさんのこと)話す。

② がんセンター患者さん(Oさんのこと)

③ メリークリスマスと叫んだ人

この三つの出会いが、私を励まし続けていることに繋がっています。

訪問始めの頃は、勉強したと言っても相手の方に了解を頂いて、入室し向き合っても10分15分の時間がどうしていいか解らず、逃げ出したくなる自分がいて苦痛にちかいものでした。そんな体験を何度もしていたことを思い出します。

弱っている人、病気の人、老齢な方々を訪問できるということは、それだけで自分は優位な立場に立っています。何かをしてあげる、とか話を聴くことで解決をしてあげていると思いたいのですが、実は自分の中の力不足、経験不足、してあげようとする事など・・・。

諸々自分の方に問題があるのだと気付くために、私の場合い数年掛かりました。

◆ ボランティアとして奉仕をしながら感じていること

特に老人ホームでは、病院の患者さんと異なり、相手になってほしいと望んでいることを感じます。イベントや何か物を差し上げることを否定するものではないのですが、(生活一部でもあり必要なこともあるので)もらった人は、心から喜んでいるのだろうか、と思うことがあります。

何故かと言いますと後で訪問すると、これ、もらっても置くところも無いし、あまり嬉しくない、の声を聞いたりして個人差があります。それより側にいてほしい、私の方を向いてほしいという目を感じます。そんな時その人の中に寂さや、悲しみを感じることもあります。

また、特に老人ホームに入所してきた方の変化を見ていると心が痛みます。

1週間~1ヶ月位は明日帰る、すこしだけ此処に居ると言います。そして自分の好きな人、頼りにしている人が迎えに来ると信じているようです。

3ヶ月~半年位になると、こんなはずではなかったと諦めの表情に変わって来ると感じます。また此処へ来るのにどのような納得で此処に来たのだろうと思う事があります。そうして時には物のようにソファーに凭れていたりして、人としてこれで良いのかと悲しみを覚えます。

私達が住んでいるこの社会では、急激な変化が起きて心の準備も無いまま高齢化が進んでいます。
家族も周りも昔のように支えあって生きる仕組みは無くなって来て行き場の無い人が増えているのですが。現実がある以上、気が付いた人、共に居たいと望む人達が支えあって行く社会、人に優しい社会を目指すこと、そのために多くの人が専門の教育を受け、携わっていく必要があるのではないかと、私は考えています。
幸い、敬老奉仕会を立ち上げられた吉永先生の熱い思いは、仙台発信の欧米型のボランティアを養成することを目指していて、良き社会作りが始まった事を心強く思っています。
少しずつ社会の中でも気付き変化が見られていることは、希望でもあると思います。

◆ ボランティアとして受け入れられて

さて、此処からはボランティアをしたいと望んだ私達を受け入れて下さった、自生苑での具体的な活動の様子を話したいと思います。苑長さん始め職員の方々は、快くどの場所でも私達を受け入れて下さっています。

自然環境も良く、四季を感じながら出かけるのは楽しく、待っていてくれる方々に感謝しながら行っています。

◆ 具体的な活動の様子

1. 訪問は、毎週水曜日午後からの活動です。祭日でも行くようにすることもあります。休む時には担当の方に連絡をします。自分の都合で行ったり行かなかったりすることはありません。

2. 訪問前にボランティア担当の松本さんと、入所の方々の様子を聞くこともあり、体調が悪く訪問しないほうが良いと思われる方など、事前の打ち合わせをすることもあります。

3. これから訪問するという前に、必ず2,3分の黙想、祈りをして心を整え気持ちを集中して向かいます。

4. 手を洗い、うがいをして身支度を整えます。

5. ボランティア同士が廊下ですれ違っても、立ち話をしないようにしています。

6. 疲れている時や、ヒーリングが合わないと判断したら無理をしないで失礼する(おなじ人でも合わない時がある)

7. 正直であること、解った振りをして話を合わせると、信頼されない。

8. 相手の方と対する時は“今ここ、この時しかない”を大事にする。過去のこと、未来のことは変えられないその意味で今このときしかなく、後からは訂正が効かない。

9. 相手の方には、今まで生きて来た生き方があり、それを静かに聴きその人言葉の中に、その人の心があるので心を込めてききます。(言葉になっていることはその方の核になっているのだと思います。)

10. 会話の中で、その方にとって大切と思われる言葉を反復する事、私にとって納得出来ないとしても、その人の言葉として認めてあげること。その方の心の叫びに出会うためにしっかりとその人の目を見て相手をします。

11. 家庭の事や家族関係を話すよう誘導しないこと。今話している人が大切、中心。

12. 悩み苦しみを解決してあげることは出来ないが、あなたが大切な存在であり心の中に共に居ることは出来ることを伝える。

13. 最後に、その日関わりを持てた方の様子など記録をして帰ります。
守秘義務はあります相手方、施設の事

◆ 相手の方はボランティアをどう見ているか

大事なことは相手の方が訪問されることをどのように受け止めているか、を知ること。

①相手の方が、今訪問が要らないという意思表示がある時、決して無理強いをしないように、速やかに感謝の気持ちでそこを離れる事が大事です。
これは相手の方が断ったり受け入れたりする自由を持って居ることを尊重しています。

②折角来てくれたのだから、相手になってあげると、こちらに気を使ってくれることがあります。それでは意味が無くなります。そんな事もだいぶ後になってから気が付く失敗でした。

③老人ホームに入所の方は、認知症とか、アルツハイマーとか病名が付いている方もいます。ボランティアもそのように受け止めていると時々普通の状態で、こちらをよく観察していて病名は付けられないなと感じてしまいます。

ボランティアは高齢者だとか、病気を持った人と思う必要は無く一人の大切な人であり、脳の記憶のこと、心のことは別のことであると思います。

◆ 具体的な体験

学問的に私の考えを話すことは出来ませんが、3年間訪問している方が一人でベットの上に居ました。(この方は、認知症、アルツハイマーの病名を持っています。)

“いらっしゃい”と初めて言いました。(名前も覚えないし本当にびっくりでした。)
(Kさん)

私は、心、魂と向き合うボランティアには、ノウハウやテクニックは要らないと思っています。
解らない事は解らないと答えます。その場限りに“うそ”は駄目です。正直である事、それが条件と思います。どんな人でもうそは解ってしまうからです

最近、Kさんから、何故、死ぬの? 死ぬのは怖いと言われ、隣に居た方もおらも怖いと言いました。私は答えられませんでした。正直に私も怖いと答えました。

私は、其処(あの世)に行ったら楽しく遊んだ人や好きだった人に会えるかも知れないと思ったりしていると言うと、そうだねと笑いました。(ポジティブな事を話すとよい)

最後にボランティアが、出来ることを感謝しています。

私達のグループは、赤いエプロンを付けて訪問します。高齢者の方は触らせてとか、赤いエプロンのボランティアと言って待っています。それでいいのだと私は思って続けて行きたいと考えています。

2010/01/22 小林 テイ子


講演2 ボランティアと施設の協調

吉永 馨

1.施設はボランティアを入れて総合力をアップしたい。
ボランティアは施設で奉仕したい。
この二つを糾合すると、大きな戦力になる。
これを実現しない法はない。施設もボラも得だから。実現しないのはもったいない。
糾合する方法を探究する。

2.ボランティアは利用者に奉仕し、奉仕の喜びを生きがいとしたい。
施設はそれを理解し、ボランティアがやり易いように配慮する。金は掛けない。
この単純なことを成功させる方策如何?

3.ボランティアは施設に好まれる存在でなければならない
勤務が規則的(週1回、決められた曜日、時間)
施設のルールを守る
職員と同じにルールを守り、利用者のプライバシーを守る
やりすぎに注意。現場の職員と調和する。慣れないことは職員の指示、了解の下に行う。

4.施設はボランティアをよそ者と見ず、仕事仲間として意識する。
介護の実技は職員、利用者の心のケア
話し相手、寄り添う者
役割分担(ハードとソフトのような関係)を明確にする。もちろん若干のオーバーラップはある。

5.以上を実現する方策
a、ボランティア開始時、両者はよく協議(マッチング)する。
施設はボランティア担当者(コージネーター)をおく。専門のコージネータでなくてもよい。ここことに熱心な職員の誰かを選ぶ。担当者とボランティアが協議する。
ボランティア開始後も細かに微調整を行う。これが大切。

b、ボランティアの身分を明確にするため、認定制をとる。施設長が認定証に署名捺印し、ボランティアはそれを携帯して働く。これは準職員の身分。仕事仲間の身分,

c、ボランティアは帰る前、必ず活動記録を残す。

6.言うは易く行うは難い。維持発展するには研修が必要。定期的に研修する。ボランティアもコージネーターも。


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